今 - みる会図書館


検索対象: 星空ぷらねっと
173件見つかりました。

1. 星空ぷらねっと

昼休み。 僕は一人寂しく、『迎賓館」で昼食をとっていた。 いつもは美味しいはすのランチセットも、今日は箸がすすまない 普段はちょっかいをかけてくるゆかりちゃんも、僕の虫の居所が悪いことを察したのか、 言しかけても来ない ば 5 っと外を眺めつつ、おかずを箸でつつく僕。 「あ、あの : だけど、僕は立ち止まらない 歩く速度も落とさない 僕が、瞳と一緒に登校しなきゃならない理由は、どこにもないのだ。 たたた、と小走りで僕の後ろにつき、また歩き出す瞳。 付かず離れずーー端から見たら、なんて健気なんだろう。だけど 750

2. 星空ぷらねっと

進学希望の 2 年生が、最初に進学のことを意識させられるイベントーー進学説明会。 これは、 2 年次の末から 3 年次中期にかけて、ひ「きりなしに行われる。要するに、大 学から講師や関係者を招いて、進学に関する話を聞こうというものである。 その記念すべき第 1 弾が、今日。 7 校の大学関係者が招待されていた。 6 限目のホ 1 ムル 1 ムを省略して、参加希望者は体育館に集まる。 進路説明会の参加者は、ば「と見て 200 名ほど。中には、一応進学組の僕ゃーー瞳の 姿もあった。 講演は、主に大学事務の人や助教授によって行われる 各校の説明が淡々と過ぎていくのを、僕はばんやりと聞いていた 将来かーー特に行きたい大学があるわけでもないしなあ。 長い時間をかけて、 6 校目までが滞りなく終わる。 次が最後かーーあくびをかみ殺す僕の目が、次の瞬間、講演者に釘付けとな「た。 『あー、こんにちは。一 n ( 0 「 n 一 on 巴 University 0 『 space Ae 「 on u ( 一ワ and Sc 一 0n00 からやってきました。ジョン・ウィリアムズと言います』 な、なんでジョンが、壇上に立ってるんだ ? 章 第外国人、ということで、集まった連中が少しざわっいた。 753

3. 星空ぷらねっと

インターナショナルは最近の流行りだ。 『略称は : : : 日本語の名称は、国際航宙科学大学です』 ざわめきが少し大きくなる。 僕の心のざわめきも、しかり。 『この大学は、日本にはありません : : : 太平洋上に、存在するのです』 『海上に浮かぶ超大型浮体構造物、その集合体を敷地として建築されるは、宇宙開 発事業を主眼に据えた人材教育ならびに研究の場として、世界中から人材を集めることに なります』 おいおいおい 『つまり、ちょっとばかりスケールの大きな国際大学ってことで』 ちょっとなんてものじゃないぞ、それはー 紹介された 7 校の中で最も学生たちがざわめいていることからも、それは明らかだ。 『基本的には、本校の教育事業は第一一期国際スペ 1 スコロニー計画と直結しています。っ まり、この計画を担う若者を教育する場として、は機能するということです。本発 表は、明日主要な報道機関に公布され、たぶん、それなりの世論を招くことになると思い ます。 : 設立に関わった者の一人としては、諸君らのような若者の中から、有望 754

4. 星空ぷらねっと

先天性心疾患ーーー生まれつき心臓の一部に欠損などがあるもの、あるいはむ臓に直接っ ながる大動脈や肺動脈などの血管に異常があるもの。 】セントでしかな 発生率はごく軽微なものも含めて 100 人にひとり。つまり、約 1 パ や、気にかけていれば、注意していれば僕にもそ 瞳はーーー自分の病気を知っていた。い れは分かったはずだった。海で溺れかけた時も 「きゅ、救急車だ、早くっ 何が起こったのか分からなかった。 沸き上がるどよめき。 立ち上がる人々。 倒れた瞳。 大騒ぎになった館内で、僕は一人、事態が飲み込めずに立ち尽くしていた。 僕はーーー動けなかった。 758

5. 星空ぷらねっと

「はあ : : : 」 ため息を吐いても、一人暮らしの狭い部屋に響くだけで、誰の耳にも届かない その時ーー電話のベルの音が、僕の鼓膜に突き刺さった。 『よお』 慎太郎だった。 『だいぶ疲れとるらしいなあ ? 』 「そんなことないよ」 『そか ? ま、そりやええわ : ・・ : 』 慎太郎はいつもの口調で、さりげなく尋ねる 『ところで : : : 瞳ちゃんの見舞いには行ったんか ? 』 : なあ、正樹 ? 』 『そか : 『お前ら二人のことに、ロ出しするつもりはあらへんけど : 「し、しんたろ : 『それだけや』 ′女男〃だけにはなるな 762

6. 星空ぷらねっと

「ただいま 「おかえり」 あいさっ 1 年半ぶりの、父さんとの挨拶。 僕は冬休みに入るなり、実家に帰省した。 田舎に帰ろうと思った理由は、分からない しょ - っそ - つかん という、妙な焦燥感があったのだ " 帰らなければならない〃 「そろそろ進学のことは考えているのか ? いや、まだだけど」 「就職か進学かも決めてないのか ? : うん」 さ。お前の人生だ」 「まあ、よく考えて、自分のやりたいことをやればいい : か」 「やりたいこと : 「まだ時間はある。ゆっくりと悩むんだ」 「 : : : そうする」 父さんと少し話をした後、僕は自分の部屋に行った。 部屋は、意外と片付いている。どうやら、妹の朝子が掃除をしてくれてるようだ。 あさこ

7. 星空ぷらねっと

ャケになる。 夢を抱く故に孤独が強まるのなら、夢なんか持たない方がマシだ。 そう、思っていた 『お母さんが作ってるロケットって、月まで行けるの ? 』 『月までは届かないわねー』 『なーんだ、つまんないの』 『一一口ったなー ? でもね、これが完成したら、次はもっと大きなロケットを作ることにな るわよ』 『そしたら、月へ行ける ? 』 『行けるわ。そしたら次は、もっと遠くまで』 『もっととおく : : : 』 『火星とかね。月はもう、アームストロング船長たちが行ってるけど、火星はまだ誰も行 ったことがないのよ』 『ほんと ? 』 『ほんとよ 1 』 『じゃあ僕、火星に行く ! 一番最初に火星に行くんだ。お母さんの作ったロケットで』 166

8. 星空ぷらねっと

僕には 『世の中にはな : : : 平凡にすら達することのできない人間もいるんだ。お前は : : : 五体満 足なお前は、そういうことを考えたことがあるか ? 』 できないこと。 それはーーーできないんじゃなくて、やらないことだ。 ただ、やらないだけ それに気付いた時ーーーあるいは、思い出した時。 『まーくん』 一緒に通学した瞳の姿が 『ま 1 くん ) 』 笑顔でしがみついてきた瞳の姿が 『まーくん ! 』 ややスパルタな感じで数学を教えてくれた瞳の姿が 『まーくん : : : 』 天美山の山頂で見つめ合った瞳の姿がーーー・僕のまぶたの裏に、一斉によみがえった。 目頭が熱い。 768

9. 星空ぷらねっと

頬を伝う涙が熱い。 心が痛い その熱さに 『そんなになりたいなら、瞳一人でなればいい 『それがどれだけ僕を苦しめたか ! 夢をあきらめた僕の気持ちなんて、分からないだろ ) っウ【』 ひど なんて酷いことを 僕は あれは断じて、自分であきらめただけの人間が、あきらめざるを得なかった人に対して 言っていい言葉じゃない 心臓病のことを知った時、彼女はどんな気持ちだっただろう。 あれだけの頭脳を持ちながらーー夢も希望も、そして願いもたくさんあるはずの彼女が そんな些細なことで全てを断たれるなんて。 『 Passion iS power 』 章『笑ってると元気になって、元気になると情熱が出て、情熱は活力で原動力で行動力なん 第だもん』 ほお 769

10. 星空ぷらねっと

「卒業おめでとう : : : 」 「うん : : 合格も」 「それから : うん」 なぞ 少し、謎が解けた気がする 合格を知ってるってことは、大方ジョンにでも連絡をもらったんだろう。そして、 僕がここに来ることを予測したんだ さっすがまーくん。ちゃーんと夢、手に入れちゃうんだもん ! 」 「あはー 不意に瞳は、いつもの陽気な声を張り上げた。 「やつばり、わたしが思った通りだよ。素質あったモンね、うんうん。いやあー、わたし の人を見る目も大したモンだ。うん」 無理に元気を出してるようにも見える。 : : : む臓の方、どうなの ? 」 「瞳 僕が尋ねると一瞬、瞳の表情が曇った。 「 : : : も、平気。トライアスロンとかしなければ」 「そか」 778