あとがき ・皆さん、 この作品に登場する、「ジョン・ウィリアムズ」というキャラクターの名前 聞き覚えがありませんか ? 本文の中では「世界的な作曲家と同名」と書きましたが、具体的に言うと、「ジョーズ」 や「ロストワールド」などのスピルバーグ作品を始め、「スター・ウォーズ」「スー ン」「ホーム・アローン」など、数多くの映画音楽を手がけた、現代作曲家の巨匠の名前 なのです。 ( 変わったところで、ロサンゼルス・ソウル・アトランタの各オリンピックのファンファ ーレも手がけておられます ) 島津は今回、ジョン・ウィリアムズ氏の曲をにしてノベライズ執筆を続けたワケ ですが : : : この方の創り上げた華麗なメロディーは、聴く人を本当にワクワクさせてくれ ます。 oa ショップの映画サントラ・コーナーに行けば、「作曲 / ジョン・ウィリアムズ」の oa が何枚も置いてあるはずですので、興味のある方はぜひ聴いてみてください。 では、またお会いしましよう : : : えっ ? 編集さん、どうしました ? 2
『ヘンなの』 『財テクと言ってくれ』 " 財テク ~ という言葉の意味が分からない僕の様子に、ジョンは愉快そうに、流暢な日本 語で言ったものだ。 『まだマサキは、。のことなんか考えなくてもいいのさ ! それより、遊びに来た んだろう ? 』 ジョン、か。今は、どこで何をしているんだろう。 そもそも、ここで彼は何の仕事をしていたんだろう・ーー・以前はの宇宙飛行士だ ったという、あのジョン・ウィリアムズは。まあ、今となっては知る術もないけど フェンスに囲まれた、学校の校庭よりはるかに広い空き地 だれ 周囲を見渡しても、監視する者は誰もいない 「。よな ? 」 つぶや 誰にともなく呟いて、僕はフェンスを越えた。 雑草の生えた大地に飛び降りて、あてもなく散策してみる。 りゅう亠つよう
『滑走路が広くて、街に行くのが大変だからみんな表に出たがらなくてねー』 『それ、おかーさんもでしょ ? 』 ーのよ、ジョンは体力有り余ってるんだから』 『おほほほ。 ジョン・ウィリアムズーー世界的な作曲家と同名の、アメリカから来た友人。 母の仕事を手伝っていたようだけど、詳しいことは今も知らない ころ いつも暇を持て余していて、子供の頃の僕とよく遊んでくれた 追憶の中でも僕は、ジョンと遊ぶために学校から自宅ではなく、ここへやってきていた。 : ジョンってどんな仕事してんだろ ? 』 いろいろね』 『んー 『何でもできるってこと ? 』 『雑用ならなんでもね。彼、器用貧乏なのよ」 『ふーん』 『よっ、来たな少年』 そこへ、ジョンが戻ってきた。山のような荷物を、太い両腕で楽々と抱えている。 追『街中を回って、安い所を探しまくったよ』 章『お金なかったの ? 』 第『いんにや、単なる趣味さ』
第 3 章追憶 「今はアイン教授のところに世話になっているよ」 「 : : : 天美電波観測所で ? 」 「ああ。いろいろと雑用をしているよ」 天美電波観測所ーー・宇宙から地球に届いた電波などを観測する施設。ロケット関係の研 究実験を行っていた三陸技研とは勤務内容が異なるけど、ジョンが宇宙関係の仕事を続け ていることに変わりはなさそうだ。 とい一つことは ジョンは、まだ夢を捨ててないんだろうか ? でも、それは訊けない 訊きた 訊けるワケがない ジョンは間違いなく、夢に向けて数年間は遠回りを強いられている。 それはもしかしたらーー僕のせいかもしれないんだ。 ジョン・ウィリアムス いつも陽気で冷静な、僕の古い友人。 しっせき 彼に叱責されたのは、 " あの日〃のただ一度だけ その後、僕とジョンは一緒にタ食のひとときを過ごした。
進学希望の 2 年生が、最初に進学のことを意識させられるイベントーー進学説明会。 これは、 2 年次の末から 3 年次中期にかけて、ひ「きりなしに行われる。要するに、大 学から講師や関係者を招いて、進学に関する話を聞こうというものである。 その記念すべき第 1 弾が、今日。 7 校の大学関係者が招待されていた。 6 限目のホ 1 ムル 1 ムを省略して、参加希望者は体育館に集まる。 進路説明会の参加者は、ば「と見て 200 名ほど。中には、一応進学組の僕ゃーー瞳の 姿もあった。 講演は、主に大学事務の人や助教授によって行われる 各校の説明が淡々と過ぎていくのを、僕はばんやりと聞いていた 将来かーー特に行きたい大学があるわけでもないしなあ。 長い時間をかけて、 6 校目までが滞りなく終わる。 次が最後かーーあくびをかみ殺す僕の目が、次の瞬間、講演者に釘付けとな「た。 『あー、こんにちは。一 n ( 0 「 n 一 on 巴 University 0 『 space Ae 「 on u ( 一ワ and Sc 一 0n00 からやってきました。ジョン・ウィリアムズと言います』 な、なんでジョンが、壇上に立ってるんだ ? 章 第外国人、ということで、集まった連中が少しざわっいた。 753
子供の頃からここにいる教授と、最近ここへ来たらしいもう一人ーーー母の仕事仲間であ った、元 z < 付宇宙飛行士、ジョン・ウィリアムズ 僕の子供時代をよーく知っている大人が、一一人もここにいる。 そして、大人というものはえてして、成長した子供に、その幼少期を語りたがるものだ。 それが子供に、どんなに苛立ちを覚えさせるかも知らず。 やつばり、来るんじゃなかったかなあ。 「まーくーん、どこー ? 僕を捜す、瞳。 「まーくーん、どこお ? 調子づいて、マネをする慎太郎 ( あとで、制裁を加えちゃる ) 。 一一人の声に、懐かしい声が反応した。 「つまり、まーくんとは正樹のことかね、お嬢さん ? 」 夜 「はヘ ? おじさま、誰 ? 」 の 宿「はは、おじさまは傑作だ」 合 夏愉快そうに笑う " おじさま ~ に、天子部長が恐縮した様子で頭を下げる。 章「こ、これは、教授ー 第「キョウジュ 5 ? だれ
登場人物 ほしみひとみ 星見瞳正樹の幼なじみ。小 学生のころ転校していった が、また大美市に戻ってきた。 いまむらまさき 今村正樹友愛学園に通う 2 年生。天文部に籍を置いて。 いるが、現在は幽霊部員。 プー ' イ 山本ゆかり正樹たちの幼な じみで後輩。学園にあるカフ ェでアルバイトをしている。 1 にのみやてんこ ニノ宮天子天文部の部長。 実践フルコンタクト天文観測 を提唱している強者。 / 季 やまもと 喀 0 みすしましんたろう 水島慎太郎正樹の悪友で同 じ大文部に所属。幼いころは、 ゃんちゃなガキ大将だった。ー ション・ウィリアムス正樹 の母親の同僚だったアメリカ 人。以前は宇宙飛行十だった。
僕の夢は、宇宙飛行士になった。 母は僕を仕事場に頻繁に連れて行ってくれた。 難しい理論は分からなかったけど、やらなくちゃいけないことは教わった。 ジョンと友達になって、色々と教わった。 " 宇宙飛行士 ~ になるためには、勉強ができなくちゃ駄目だ。 体力も必要だ。 ジョンは、幼い僕を対等に扱ってくれた、初めての友達だった。 そのジョンから教わった。 「女曲には優しくしなきやダメ 「友達は大切にしなきやダメ」 だから僕は、彼の信頼を得るためにもそれを守らなくちゃならないんだ。 それも守れないようじゃ、とうてい " 宇宙飛行士…になんかなれないって。 がんば 僕は、頑張れる。 母のためにも、ジョンのためにも。 そして、僕自身のためにも。 そう、思っていた時代があった 156
「うん、今行く」 ジョンの催促に応じる僕に、慎太郎は肝心なことを聞いてくれた 「瞳ちゃんには俺から一言うとくわ : : : なんか伝一言あるか ? 「そうだね : : : じゃあ、『いってきます』・ 「 : : : 確かに 車両に乗り込む間際、僕の一番の悪友は、下手くそなウインクをしてみせた。 : いい友だな」 「ジョンも含めて、ね」 「世辞を言っても、おごれるモノはないぞ ? 」 ニャリと笑みを浮かべながら、ジョンは僕たちの座席を搜す。 「さて、私たちの席は : のだから : : : おや ? わき のぞ 動きの止まったジョンの脇から覗き込むと、僕たちの席に先客がいた。ジャケットを毛 布代わりにして、ぐっすり眠っている。 「指定席なのに・ 「マナーの悪い人間はどこにでもいるものだな。しかし : : : 何だ、この大量の籀は ? 」 2
「・ : : ・僕自身って、なに ? 「宇宙飛行士を目指していたキミだ」 「ま 1 くん ? 」 「マサキ ? 答えを急く二人に背を向ける。 何を答えればいいんだろう ? いやーー・何て答えればいいんだろう ? 「マサキ ! どうして : : : っー 苛立っジョンの声が、逆に僕を無気力にしていく。 僕はただ、ゆっくりと慰霊碑の前から立ち去ることしかできなかった。 駅でジョンと別れ、家までの道をゆっくりと歩く。 「まーくん : : : 」 そんな僕の少し後ろを、瞳がおっかなびつくりでついてくる。 「ま】くん : : : ジョン、寂しそうな顔してたよ ? 746