屈折望遠鏡 - みる会図書館


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: おっきいのはやつばり高いよ 5 」 「はわー 「そりや、そーだよ」 「はううーん : 望遠鏡専門店で、僕は日がな一日、困った顔をしながらもニャケている瞳の姿を観 察することとなった。 みもだ ズラリと並んだ望遠鏡の前で、嬉しそうにクネクネ身悶えしている瞳の姿は、見ていて 飽きない 肝心の、瞳の決断はーー僕の予想通りだった。 「やつばり、この子にするよ ! 」 彼女は、最初にパンフレットで見た、平凡な屈折望遠鏡の前で言った。 「気難しい反射君とか、ちょっと孤高のカセグレンさんよりも、素直で優しい屈折君がわ たしに合ってそうだもん」 その選択はまず、最善と言ってよさそうだ。 「うん。信頼曲や値段も、申し分ないよ」 「んじゃ、買ってくるねー ほほえ ハタバタと走り去る瞳の後ろ姿を、僕は微笑ましく見つめた。 しかし、僕の表情があきれ顔に変わるまで、それほど長くはかからなかった。

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鏡 で、日曜日。 遠 望「これが屈折望遠鏡かあ」 章「うん。んで、こっちから順に胴の短いカセグレン系、ニュートン式、天体撮影専門のシ 。てるね」 第ュミットカメラと続、 うれ 「な 5 にーを 5 、クールに決めとんねん ! 誘われて嬉しいんやろ ? 」 「そ、そんなことは : : : 」 「かあーっ ! よお言うわ ! 」 僕の態度が気に入らないらしく、慎太郎は熱く語り出す。 「ええか ? オマエは、望遠鏡博士のこの俺を差し置いて行くんやで ? 男なら、ビシソ とキメたらなアカン ! 生半可な気持ちで行くんやないで 5 「いや、お前が何を言ってんのか、さつばり分かんないんだけど : : : 」 「アホンダラ ! 望遠鏡を一緒に買いに行くいうコトは即ち、その二人は合一つちゅうこ とや ! そもそも、我々天文家にとって望遠鏡とは : : : 」 彼の熱弁を妨げる権利は、ない 僕は望遠鏡フェチを放置して、トイレに向かうのだった。

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「いろいろ種類があるみたいだけど : 「口径の違いや、あとレンズの違いもあるからなあ 「レンズ ? 」 「つつ : これ以上突っ込まれるのは、さすがにキツイ。 と、そこへ 「それはやなあっー 「わあっウ 目をキラキラと輝かせ、望遠鏡フェチの慎太郎が話に割って入ってきた。 「普通のタイプはアクロマートレンズゅーのが使われとるんやけど、その他にも蛍光結品 やガラス、ガラスなんかを用いたものもあるんや ! 」 マニアックな知識を披露する慎太郎。 僕も人並み以上には望遠鏡に詳しいつもりだけど、コイツがガラスだの結品だのといっ た話まで始めると、ちょっとヒイてしまう。 「えーと、こっちは反射望遠鏡だっけ」 「大口径を買うなら、反射の方が屈折望遠鏡より安くなるんや。ただ、ちょっとクセがあ るさかい、使う時には若干気を使わなアカンこともあるな」

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「 : : : 何やってるの ? 」 とうとう根負けした僕が尋ねると、瞳はピタリと動きを止め、その場で一瞬 " 溜め ~ を 作った。 ・ : ビバ・望遠鏡 ! 」 「つ 5 っ : そして、晴れやかな宣一一一口と同時に、カバンの中からさまざまな望遠鏡のパンフレットを 取り出す。 「わたし、望遠鏡が欲しいのお ! 」 「そ、そっか : ・・ : 買うんだ ? 」 「うん ! で、どれがいいか悩んじゃって」 どうやら、さっきの『ウキ』とか『コケ』とかは、瞳なりに悩んでいるポーズだっ たようだ。 軽くあきれながらも、僕は彼女の相談に乗る 「そうだねえ : : : やつばり屈折望遠鏡かな。小口径のものは特に初心者向けで、手入れも 鏡簡単、映像は鋭い。ビギナ 1 お薦めの一品だよ」 遠 望「ふみふみ : : : 」 章「まあ、口径が大きくなると値段も跳ね上がるんだけど、 100 ミリくらいなら充分手の 第届く範囲じゃないかな ? 」

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「 : : : どしたの、まーくん ? 考え事 ? 「えっ ? いや、ちょっとポーツとしてた。。 コメン」 「うむ、許してつかわすぞよ」 夕暮れの街を、一一人で歩く。 瞳の腕は、望遠鏡をしつかり抱きかかえていた。 いやーーーそれはもう、 " 望遠鏡…じゃない。実は僕、喫茶店を出る時に、 『それ、重いでしょ ? 持ってあげるから』 と瞳に言ったんだけど、即座に瞳が言い返していわく。 『だいじよぶ。オリオン君は自分で持っ』 : ・誰、それ ? 』 鏡『屈折望遠鏡のオリオン君』 望 とゆーコトで、彼女が抱いているソレは、 " オリオン君 ~ なのだ。 こわ 章 なんだか、 瞳が慎太郎化していくようで、ちょっと恐い 第「だけど、すっかり遅くなっちゃったね」 それとも・ーー・これだけでは、夢をあきらめる理由として不充分だろうか ? だれ

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てみるのもえーんとちゃうか ? 「うーん、そんなモンかなあ : ・・ : 」 生返事を返したものの、僕にだって慎太郎の言うことは理解できる。コイツはこれで、 いつまで経っても無気力な僕を、気遣ってくれているのだ。 「そんなワケで : : : 部活は来週からスタートや ! 」 ま、それが言いたかったんだろうなあ、とは思ったんだが。 「まあ、考えておくよ」 「気が向いたらキミも来るとエ工わ。ほな、また明日なあ」 「え ? 先に帰っちゃうのか ? 」 「これからバイトなんやわ。今度買おうと狙うとる望遠鏡は、値段がチト高くてな」 「お、お前、もう川台以上も天体望遠鏡持ってるじゃないかー これ以上買って、どーす んだよ ? 」 「ほいじゃ、お先ーっ 結局、慎太郎はさっさと、階段へ誚えていった。 あの、望遠鏡フェチめーーー家中、望遠鏡で埋め尽くすつもりか ? ねろ

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と向かい、そこで観測するという過酷な観測行だ。 で、期末テストの成績が悪かった慎太郎は、みんなの倍以上の荷物を持たされている しかも望遠鏡やカメラなど、デリケートな機材が多く、乱暴に扱うことはできない っとも、変態望遠鏡フェチの慎太郎が、望遠鏡を粗末に扱うはずもないのだが。 「うわー、慎太郎君、重そー」 「 : : : 心配してくれるのは瞳ちゃんだけやで、ホンマ 「うん。心配だけはしてあげる」 : なあ正樹、カノジョの教育をし直した方が、エ工んとちゃうか ? 」 「僕に一一一口うなよ」 きりきり歩けっー 「何をくっちゃべっておるかー 「つえー 「しやきっとせんかっー : とほほほほーっ 「はいいっ 自業自得とはいえ、哀れである。 ホント、瞳に数学を教えてもらって、正解だったなー 月 4

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第 4 章望遠鏡 「あ】、オリオンく】んー 転んだ拍子に瞳の手を離れてしまった望遠鏡は、大きな放物線を描いてーー天美大用水 「ダメーっ ! 」 必死の懇願は、一際大きい水音でアッサリ拒絶された。 「あーん、わたしの望遠鏡うーっ 瞳の表情が、見る間に失望の色に染まっていく。 一瞬絶句してしまう僕を振り向き、彼女はこの世の終わりのような顔で呟いた。 「・ : ・ : 結構深いんだよね、ここ ? 」 「う、うん、まあ : : : 」 : うう、せつかく買ったのにー」 「はう : 「あ、ちょっと : そして、僕が止める間もなく、肩を落としてトボトボと歩いていった。 あ、哀れすぎる ! あんな哀愁たつぶりの後ろ姿、見たことないぞー それにー・ー僕が何も言わないうちにあきらめるなんて、早すぎるっちゅ 1 にー

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そしてーーー背中に隠しておいた望遠鏡を前へと押し出した。 「それ : ・・ : オリオン君 ? 」 瞳の目が、見る間に見開かれていく。 「もしかして : : : あの用水路に入って取ったの ? 」 「まあ : : : その : 「危ないよ : : : 深いって言ったから自分じや取らなかったのに : ジッと見つめてくる瞳から、僕は気恥ずかしさのあまり、つい目をそらした。 確かに、用水路は深かった。 『瞳を呼び止めてる間に、 望遠鏡が流されたら : : : 本末転倒 ! 』 やむなく瞳を放っておいて、大慌てで用水路に飛び込んだまではよかったけどーー水面 は胸のあたりまでくるわ、底の方の流れが上よりも強いわで、僕はかなりゾッとさせられ たものだ。 「でも、せつかく自分で選んで買ったものだし、こっちも最初に買った望遠鏡で、イヤな 鏡思い出なんか作ってほしくなかったし : : : もしかして、余計だったかな ? 」 望 照れくささに耐えながら説明した後、チラリと瞳の顔を盗み見る 章 視界に飛び込んできたのはーーー僕にギュッと抱きついてくる瞳の姿だった。 第「 : ・・ : ありがとー」

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童はしばらく腕組みをしてうなったが , ーー不意に、カんで立ち上がった。 「 : : : やつばり、実物を見て決めるのだ ! 」 「うーん : : : 妥当ではあるね」 「ま、それがええやろな」 僕も慎太郎も、したり顔でうなずいた。やつばり、この手の買い物は、現物を見ながら 検討するに限る。 その時、瞳が出し抜けに一言。 「と、言うワケでえ、次の日曜日空けておいてね、まーくんー すぐに反応しな ( ィー 、業こ、瞳はあからさまにあきれた表情を作る 「は、じゃないの ! 一緒に望遠鏡を買いに行くの ! 」 これは、ウッカリしていた。確かに、ビギナーが望遠鏡を買うというんだから、経 験者が同行するに越したことはない 「ホント ? 「まあね : ・ : ・イテテテテテッ 普通に請け合う僕の耳を、慎太郎がいきなり引っ張り上げた。