携帯電話 - みる会図書館


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1. はぴねす!

ず、一人で行ってみるしかないな。伊吹に会うためにも : : : ) 信哉からの呼び出しということで、試しにその妹である沙耶の携帯電話に連絡してみたが、数日 前からそうだったのと同じに不通状態だった。 そして、放課後。 雄真が校舎裏に出向くと、まだ誰もいなかった。 信哉が姿を見せたのは少し経ってからのこと、おそらくは雄真が一人でやってきたのかどうかを 確認していたのだろう。 小日向殿。伊吹様がお待ちだ」 シンプルなその一言だけを口にすると、信哉はさっさと歩き出した。 「おいおい、信哉。俺はまだ何も返事していないのに : : : まあ、ついていくんだけどな」 信哉の先導で普通科校舎の一つ、その階段を上っていく中、雄真が沙耶のことを尋ねると、その 時だけ一瞬信哉の歩みが止まった。 「沙耶は : : : 伊吹様の不興を買って、暇を出された : : : そうか。沙耶は小日向殿たちのもとに身を ま寄せているのだと思っていたが : : : 」 それだけ一一一一〔うと、信哉はまた歩みを再開し、ロを閉ざした。 円 沙耶の携帯電話が不通だった理由が、信哉の言葉で雄真にも分かった。白米を贅沢だという食生 大活の沙耶が、独自に携帯電話を持っているわけもなく、たぶん伊吹に暇を出された折に没収された のだろう、と。 273

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「う、ううつ : : : か、身体が痺れて : : : まるで全身が長時間正座したあとの足みたいだ」 そうダメージを訴える雄真のもとに、春姫が警戒心をあらわにした表情でゆっくりと近づく 「・ : ・ : なぜ、抵抗をしなかったのかは分からないけど、しばらくは動けないはすよ。でも、まさか、 小日向くんまで敵だったなんて : : : 彼も近くにいるのかしら ? それとも、彼に疑いの目を向ける よう、あれはあなたの小細工だったってこと ? 「お、おい、春姫、普通科の俺に魔法のレジストなんてできるわけが : : : って、敵い ? それって 俺のこと言ってるのか ? それに、彼って誰だよ。さつばりわけが分からないぞ」 春姫の言葉にも行動にも困惑するだけの雄真を前に、彼女はまだ厳しい表情を崩さない。 「案外、ポーカーフェイスが上手なのね、小日向くんは。魔法の初心者を装って私にいろいろと聞 いていたのも、私を通して御薙先生のことを探ろうとして : : : 大した演技力だわ」 「はあ ? もう何がなんだか : ・ : なあ、春姫、ここは一つ落ちついて俺の話を : : : 」 「気安く呼び捨てにしないで ! 」 まったく取りつく島のない様子の春姫と、ただ現状に混乱しているだけの雄真。 その状況に変化があったのは、春姫の携帯電話に彼女の恩師である人物、例の『御薙先生』から 連絡が入ってきた時からだ。 「よい、 先生。容疑者の一人として、私のクラスメートの : : : そうです。先日、先生にもお話した ハ日向くんを、ですか ? ですが : 、分かりました」 そう御薙先生との電話を終えた途端、春姫は雄真にかけていた魔法の呪縛を解いた。 8 8

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「うん : : : 先生がまさか私の : : : 確かにうちの家系には特別魔法の才を持つ人っていなかったけど : でも、そんなことって : ・・ : 」 「考えすぎるなよ、春姫。まだそうだって決まったわけじゃないだろ。単に伊吹がそう言っただけ で。そうだ。ここは思い切って御薙先生に電話して聞いてみろよ」 雄真のその提案も、鈴莉の携帯電話が留守電になっているという結果に終わる。 まさか留守電に、母親かどうかの真偽を尋ねるメッセージを入れるわけにもいかず、春姫は「ま た、電話します」とだけ告げて電話を切った。 そして、とりあえず結論が先延ばしになったことで少しだけホッとしている様子の春姫に向かっ て、雄真は「実家にいる両親の方に連絡して、尋ねてみては ? 」という提案まではとてもできなか った。 ( 成績優秀、容姿端麗、品行方正と、まさに完璧を絵に描いたような女の子、か : : : 俺だけはそん な肩書で春姫を見ないようにしてるって思ってたけど、まだまだだったな ) 鈴莉が自分の本当の母親かもしれないということに戸惑い、そして思い悩む今の春姫は、少しも 『完璧』ではない。 つい先ほどまで激しい魔法バトルを繰り広げていたとは思えないほど、雄真の目 には、い細いものに見えていた。 だからこそ、雄真の中で春姫への愛しさが急速に募る。そして、あとはもう一気に雪崩れ込むだ けだった。春姫への恋心の自覚という段階に。 ( そうだよ : : : 俺は、あのバレンタインデー前日に春姫の魔法を見た時からもう : : : 生まれて初め 726

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一方、春姫はさらに冷静沈着だ。信哉たちの見事な退却ぶりから追跡は無理だと瞬時に判断し、 携帯電話で今の出来事を鈴莉に報告している。 「 : : : はい。森に落ちていたペンの件は、向こうの罠というか、とりあえずその持ち主がやはり 、も、つ一度明日確認を : そして、雄真はというと、自分が何一つできなかった無念さに歯軋りするのみであった。 ( 俺以外は、全員魔法科の人間、か : : : 結局、そういうことなのか : : : ) ひたすら意気消沈しているだけの雄真は、それゆえに気づいていない。 ダラリと下ろした手のうちで、例のスケさんとカクさん、ダウジングロッドが誰もいないように 見える森の奥のある地点を指し一小していることに。 そこに、信哉の仕える人物が身を潜めていたのだ。 いわば、黒幕と呼んでもいいはずのその人物 : : : 以前、夜の魔法科校舎前で小雪と対峙した銀髪 の少女はロの中で呟く。 : 間違いない。魔法科一一年の神坂春姫 : : : そういうこと 「 : : : あの呪文の術式、 , 御薙と同じもの : 7 00

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ーティーにはほほオールキャストが揃っていたが、式守の本家に戻った伊吹、それと信哉、沙 耶の三名は残念ながら未参加である。 戻った、といってもそれは一時的なこと。しばらく経てばまた学園に復帰するのは決まっていて、 「その時は歓迎会ですね ) 」と、すももは予定を立てている。 他のみんなも、それには大賛成だ。言質は取っていないが、その歓迎会の主役ともいうべき伊吹 も賛同してくれるのは間違いないだろう。 何しろ、伊吹の学園への復帰に関しては、すももなしでは叶わなかったのだから。 『秘宝』が暴走したあの日、雄真からの魔力供給を受けて息を吹き返した伊吹を、一同はとりあ えず学園の保健室に運び込んだ。 そして雄真は携帯電話で自宅に連絡し、その場にすももを呼び出したのだ。 簡単に事情説明を雄真の口から受けたあと、べッドに横たわる伊吹の横で泣きじゃくるすももの 姿があった。 その涙に、目を覚ました伊吹は尋ねた。 「すもも : ・ : 私はそなたが大切だ : ・ : これから : 今頃になってそのことに気づいた愚かな私でも : も : : : 友でいてくれるか ? 」と。 おそらくその接触がなかったら、伊吹は自らを恥じて二度と、今、このパーティーに出席してい る誰とも顔を合わす気はなかったことであろう。 これから、伊吹はゆっくりと変わっていくはずだ。 240

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しゅんじ確ん 伊吹にとってすももの存在だけは特別なのか、若干の逡巡を経て、彼女はこうロにした。 「 : : : 仕方あるまい。邪魔者が増えたこともある。神坂春姫 : : : 勝負は預けておくぞ」 こも取れるそんな言葉を残し、伊吹は現れた時と同様に転移魔法でもって、信哉と どこか一一 = ロい訳し 沙耶を伴い、この場を去っていった。 そして、沙耶の先の発言には当然、雄真も「えつ、すももが : ! 」と驚いていた。 慌ててこちらに近づかないようにと携帯電話で連絡を試みると、雄真の耳にすももの元気な声が 届いたばかりか、彼女はとっくに自宅に戻っていた。 「どうして、上条さんはすももが近づいてくるなんて : : : もしかして、ワザと嘘を ? と、今はそ んなこと考えてる場合じゃなかった。大丈夫か、春姫 : : : って、痛たたたー 「ちょっと、人の心配してる状態じゃないでしよ。雄真だって信哉に : : : 」 「・ : ・ : ですよねえ。けれど、一度これと決めたら周りが見えなくなってしまうのが雄真さんです から」 そうツッコミとフォロー ( ? ) を入れた杏璃と小雪の手によって、雄真も春姫もひとまず学園の 保健室へ運ばれていく。 こうして、魔法バトルの第二ラウンドはドローゲームとして幕を閉じたのだった。 ☆☆☆ もう日が落ちかけ、明かりが必要となった保健室。 放課後というにはだいぶ遅い時間になっていたため、保健医の姿はもうなかった。 724

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思わぬ再会に、はびねす ! ☆☆☆ 小雪と別れて占い研究会の部室を出たあと、雄真の携帯電話に春姫から連絡が入った。 『普通科の校舎の屋上にいるの。今から : : : きてくれないかな ? 』と。 春姫の声が何か思いつめているようだと雄真は感じ、「分かった。すぐに行くと告げると、屋 上に向かって駆け出した。 うつむ そして、雲一つない真っ青な空の下、屋上の手すりに寄りかかった状態で俯き加減に何か考え にふけっている春姫の姿に、雄真は辿りつく。 「よう、春姫。待たせたかな ? 」 「雄真くん : : : ええと、その : : : こんにちは」 「春姫、こんにちは、って今さらだな。まあ、今日の俺たちって朝から顔は合わせてたけど、単に それだけというか : : : 変にぎこちなかったから、それも仕方ないか」 「そう、だね : : : 」 用件があって呼び出した立場の春姫が何か話しづらそうだったので、雄真が先にロ火を切った。 たった今、 小雪から聞いた内容をかいつまんで話すことで。 「 : : : というわけで、一緒には行動してくれないけど、小雪さんも昨日みたいに協力くらいはして くれそうだ : : : って、『秘宝』についてはとうに知ってたみたいだな、春姫は」 「うん : : : ごめんなさい。御薙先生から『秘宝』や式守家のことについては聞いていたの。でも、 雄真くんにはやつばりこの事件にはなるべく関わってほしくなかったから : : : 」 747

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日向様』などと呼ばれるだけでも、何やらむす痒い気持ちの雄真なのだ。 「えっと、そのお : : : そ、つ、あれだ。こんなにも心配してくれる人がいるってのに、困ったもんだ よな、伊吹にも。まったく、あの、おこちゃまときたら : : : 」 「あの : : : 小日向様。ああ見えても伊吹様は式守家の次期当主でして、そのような呼び方は控えて もらいたいのですが」 「あ、悪い悪い。けどさ、上条さんだって今、『ああ見えても』って言ったぞ。それって、つまり上 条さんも伊吹の外見のことをおこちゃまだと : 「あっ こ、小日向様、今のはどうか伊吹様にはご内密に : 自らの迂闊な言動に慌てふためく沙耶の姿を、雄真は好ましく思う。今日姿を見せてからずっと 切羽詰まった表情しか見ていなかったのだから、なおさらそう感じる。 だからこそ、雄真はあらためて心に誓った。今の伊吹を止めなくては、と。 ☆☆☆ は 何かあった時に連絡が取れるようにと、携帯電話の番号を交換して沙耶と別れたあと、雄真は一 こ路、鈴莉のいる魔法科の研究室へ向かう。 いわば、この事件の鍵であるそれを握っている御薙先 ( とにかく、伊吹の目的である『秘宝』 : 気生に話をつけないと : : ここは当たって砕けろ、だ ! ) ほとんど特攻精神で研究室のドアをノックして、「小日向雄真です」と告げると、中からの返事 みを聞く間も惜しむように一気に部屋に飛び込んだ雄真は : : : 気がつくと、普通科校舎の中庭にある がゆ 7 83

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魔法科校舎での生活において、雄真が寝るのは研究室ではない。 鈴莉が月の半分以上は寝泊まりする事情もあって、べッドなどの設備が充実している研究室は、 春姫や杏璃たちの、いわば女性用として使われていた。 その隣の普段は物置となっている部屋が、雄真用だ。 むろん、そこにべッドなどあるわけもなく、床の上に寝袋という状況である。 「まあ、慣れるとこれもなかなか : : : ふああ : : : おやすみなさい、つと」 誰ともなしにそう就寝の言葉を口にし、電気を消すと寝袋に潜り込んだ雄真だったが、目を閉じ てもなかなか眠りの底へと落ちていけない。 ( 夜は、伊吹の襲来に備えて、御薙先生が一人で見張りをしてるんだよな : : : 昼間も授業とかあっ て、少し仮眠を取るくらいで : : : タフだよな、あの人は。それとも、一流の魔法使いってのはみん なそんなもんなのだろうか : : : ) 伊吹でも恋人の春姫のことでもなく、雄真がこうして鈴莉のことを考えてしまうのは、やはりお 食事会での小雪の指摘が原因だった。 ( 御薙先生、か : : : 俺はあの人のことをなんて呼べば : しや、どう考えればいいんだろう : っそ、先生の方から何か言ってくれれば : : : けど、それは期待できないな : : : ) すぐに答えの出ない問題のおかげで、ようやく雄真がまどろみかけた時だ。 いっ連絡があってもいいように身につけていた携帯電話がプルプルとバイプ機能でもって、メー ルの着信を報せてきた。 7 98

10. はぴねす!

そのことに不平を洩らしているどころではなかった。その後自室に戻ると、今日の放課後の出来事 をあらためて頭の中で整理する。 別れ際、春姫から森に結界を張っていた件などについて他一一一口無用はもちろん、これ以上関わらな いよ、つにとキッパリ言い渡されていた。しかしだからこそ、なおさら考えてしまう。 ( 春姫が張っていた結界、あれは単に用心のためじゃないよな。現に、春姫はあの時、俺のことを はっきり敵とか言ってたわけで : : : そうだ。『彼』とも言ってた。春姫にそのことを追及したら、 「仲間がいるんじゃないかと思って : : : 」とか言い訳してたけど : : : ) いろいろ推理してみても、実際のところ、魔法絡みの事件に一般人でしかない雄真にできること はない。しかし、だからといって「はい、そうですか」と割り切れない雄真であった。 ( 確かに、俺に : : : 今の俺に、春姫の力になってやることは : ウジウジ悩んでいても仕方ないとばかりに、雄真は気持ちを切り替え、とりあえす話をしてみよ うと春姫の携帯電話に連絡してみる。が、何度かけてもそれは不通だった。 「いくらなんでもまだ寝る時間じゃないよな : ・シャワーを浴びてる ? ・あるいはどこかにケータ イそのものを忘れてる : : : もしくは、今日のことをまだ怒ってて着信拒否 : : : 」 どれほど理由を挙げ連ねても胸騒ぎの消えない雄真を最終的に家を飛び出すといった衝動的な行 動にまで導いたのは、小雪から預かっていたあのダウジングロッド、スケさんとカクさんだった。 バッグに入れつばなしだったロッドが何かを感じたのか、いきなりプルプルと震え始めたのだ。 マジックアイテムの見せる何かを予感させるその反応に、雄真はそれを掴むと走り出す。向かうは、