「いいのか、春姫は俺なんかが初恋の相手で : しや、そういう問題じゃないな。俺が今はっきり と一一一一〕えるのは : : : 俺の遅い初恋の相手が : ・・ : 春姫、おまえだってことだ」 「雄真くん : ・ 「だから、一一一〕うよ。俺が春姫の : : : その想い出の相手だ」 雄真のその言葉に、春姫の腕がゆっくりと彼の手に向かって動く。そして : 「捕まえた : ・ ・ : 私の大切な想い出を : : : そして、いつの間にか私が大好きになっていたあなたを 「春姫 : : : それを一一一中つなら、俺の方が先に捕まえて : : : そう、告白だ 0 てこ 0 ちが先だったんだし : あっ、でも、捕まえることはできていなかったかな。いつも準に女心が分からないって言われ てる俺じゃあ : : : 」 「だ 0 たら、今、ちゃんと捕まえて。もう雄真くんとは離れたくないから : : : 」 春姫の望みを叶えるべく、雄真はまずその身体をしつかりと抱きしめた。 び 続いて、そっと軽く口付けを。 互いを求め合う今の二人が感じる気持ちの昂りは、キス程度ではまったく不十分だったが、さ 劍一すがに公園のべンチというシチーシ「ンにおいてそれ以上は無理だ 0 た = ☆☆☆ の「ゆ・・ : : 雄真くん、そんな激しすぎ : : : んむ・ : : ・んんつ、んう : 舌を絡めるディープキスを実行しつつ、しつかりと抱えた春姫の身体から、雄真は服を取り去 0 7 6 7
「ぬうううつ ! なんらかのプロテクションアイテムかならば : 『風神雷神』が風の力を纏った。信哉はそれを頼りにカ任せに愛刀を振り切り、圧された春姫の 身体がふわりと浮かび上がった。間一髪、杏璃の伸ばしたマジックワンド、『パエリア』に掴まるこ とで、春姫は弾き飛ばされずに済んだが。 「 : : : おいおい、今、きたばっかりだってのに、もうこれかよ」 相手の手を互いに読み合う、高度な魔法攻防戦に、雄真はただ呆気にとられる。 そんな雄真でも理解できたのは、攻撃と防御をそれぞれ担当し阿吽の呼吸で完璧なコンビネーシ ョンを見せる信哉と沙耶の方が、急造コンビの春姫たちより一枚上手であることだ。 雄真のその理解は、早くもつい今しがた春姫とかわした約東を彼に破らせる。 危険を承知で、「ちょっと、待った— ! 」と雄真は両者の間に割り込んだのだ。 「こ、小日向くん、どうして : : : お願い、今すぐ下がって ! 」 「神坂殿の一一一一口う通り。ト / 日向殿、すまぬが、今は火急の用向きなのだ。何か用件があるのなら、ま た後日ということにしていただけぬか ? 」 「うつ、信哉、こんな時にも礼節を欠かさないャッ : いや、用件とい、つか、その : : : 」 単に、いても立ってもいられず飛び出した雄真は、いきなり言葉に詰まった。 しかし、昨夜のようにただの傍観者ではいられないと、必死に信哉への言葉を模索する。 : こんなことをしてたら、校則違反でお前も上条さんも退学 : : : なんて今さらそんなん ( え、えと : じゃ駄目だよな : : : 警察に通報するぞ : : : って、もっと駄目だ ! 考えろ、考えるんだ、俺 : : : そ 7 7 6
れないらしい春姫の上気した顔がなんとも愛らしい。 雄真もそう感じたのだろう、既に半ば剥けかけていたクリトリスの包皮をツルッと剥き上げ、指 の腹で剥き出しになったその愛芽を重点的に可愛がる。 「はあっ、ふうんつ、んうう き、気持ち、いい : ・ : 雄真くん、気持ちいいのお ! 」 小刻みに身体を震わせて快感を訴える春姫が、雄真の興奮度も加速させる。右手と左手で胸と秘 、、よ、っせ・い 所への愛撫を続けたまま、春姫の上に覆い被さった雄真は嬌声をあげる彼女の唇をも貪る。 服を脱がせていた時と違い、今度は春姫も進んで舌を絡めてきた。そこで混ざり合っていくのは、 交換される唾液だけではない。互いの吐息も、相手を求める狂おしいほどの想いすらも、激しいキ スという行為の中で一つと化していく。 どれくらいの時間そうしていただろうか、唇と唇が離れ、その間に名残惜しそうに伸びた唾液の 糸が、ブツンと切れた。そして、見つめ合う、男と女。 「春姫 : : : 好きだよ : 「雄真くん : : : 大好き・ : : だから、そのお : : : あんまり雄真くんにされていると私だけ先に : : : そ んなの嫌なの。だから : : : 」 もどかしげに言いよどむ春姫に対して、頷いた雄真は一度べッドから身体を起こして、自らの下 半身をさらした。 はちきれそうなほどに屹立した雄真の肉棒。初めて見る男性器に、春姫が目を丸くする。 「あ : : : これが : : : すごい。なんだか反り返ってて : : : これが私の中に : : : あ、やだ : : : 」 766
影を重ねて相手が今の自分を見ているとしたら、どうしたらいいのかな ? 」と。 いきなり雄真からそんな話をされて、準は一瞬目を見張り、すぐにニャリと白い歯を見せた。正 確に一一一一口えば、並の女の子では敵わないキュートさを有する準であるからして、ニャリではなくニッ コリという感じの、実に魅力的な微笑みだったが。 「な—んだ。こんなひとけの少ない場所に呼び出したから、てつきりあたしの数年来の想いを雄真 が叶えてくれるものだと思ってたのに」 「茶化さないでくれよ、準。俺は本気で : : : 」 「ハイハイ、分かったって。うん、初恋の人の面影ねえ— ・ : それって、雄真がワザワザ難しく 考えすぎなんじゃない ? 要は、雄真が春姫ちゃんのことを好きか嫌いか、二つに一つでしょ ? いつもの雄真らしくシンプルに考えなさいって」 「それはそうなんだろうけど : : って、おいっ ! 俺は相手が春姫だとは一一一一一口も : : : 」 ね「今さら、バレバレだって。あたしが気づかないと思う ? 雄真が春姫ちゃんに向けてる熱—い視 線に。まっ、あたしだけじゃないけどね。あれに気づいてないのはハチくらいよ」 「そ、そうなのか ? けど、頼む、準。まだハチにこのことは : : : あいつを除け者にするわけじゃ るふ 持一ないが、 ( チの風説流布能力は本人の自覚なしにすごいから」 「どうしようかな—。まあ、それはそれとして : : : 雄真、一つ言っておくね。どんな結果をもたら 一すにせよ、何事もし 0 かりと相手と向き合わないと、本当の恋愛なんてできないよ」 準の恋愛アドバイスといったところか、それを口にした時の彼女 : : : 否、彼は雄真の目に随分と もの 7 93
プロローグ 幼き少年は、たまたま通りかかった公園でそれを目撃した。 自分と同じ年頃の少女が、複数の男の子たちから苛められている現場を。 正確には、少女もただ一方的に苛めを受けているわけではない。わりと活発な方なのか、懸命に 孤軍奮闘していた。 しかし、やはり多勢に無勢、加えて男の子の一人にスカートをめくられた以降は身が竦んでしま ったようで、形勢はさらに不利になったようだ。 ちゅうらよ それを見て、少年はなんの躊躇もせず、苛めの現場へと飛び込んだ。 少年にとってその行動は、ことさら特別なことではなかった。 『困っている人がいたら、助けてあげる』 母親からそれを一一一一口葉ではなく、日頃の行動で自然と叩き込まれていたのだ。 だから、この手のこともこれが初めてではないわけで、少年は慣れていた。 まず、「やめろーっ ! 」と大声をあげて相手の機先を制した。そして、いじめっ子のうちでもリ ーダーシップを取っている一人に狙いをつけてタックルをかまし、自分に有利なポジションを決め ると、一発だけパチンと軽く相手の頬を張った。 「どうだ : : : 痛いだろ ? だったら、も、つこんなことやめろよ」 突然見知らぬ第三者に介入されれば、大抵の場合、それでケリがつくだろう。が、今回は少し違 5
「兄さん、何か悩み事があるんだったら、話してみませんか ? 「えっ : : 悩み事 ? 俺が、か ? ストレートな言葉を浴びせてくるすももに、一度は雄真もおトボケを決めてみたものの、伊吹と いうすももの友達が悩み事に大きく関わっているときては、それも無理だった。 「ふ—っ : : : やつば、すももに隠し事はできないな。実は : : : 俺の知り合いがな、どうしても欲し いものがあって、そのために自分を見失っちゃってるんだ。どうにかしてやりたいんだけど、なか なか上手くいかなくて : : : きっと、俺に力が足りないんだろうな」 伊吹のことを『俺の知り合い』とばかして話す雄真の言葉に、すももは黙って最後まで耳を傾け、 そして答えを提示する。 「兄さん : : : 人が心を開くのに、カなんて必要ありませんよ。相手を大切に想う心、それさえあれ ば他にはなんにもいらないんです」 すももの答えは、単なる綺麗事にも聞こえるが、そうではない。 なぜかというと、すももは既にそれを実践済みだった。 もともと他人を寄せつけない厄介な性格の上、今回の瑞穂坂学園転入すら『秘宝』を奪取するた 持一めだけにしたことだ 0 たという悪条件の相手、そう、他ならぬあの伊吹と、あ 0 という間に友達に なることに成功したのだ。 な さらに、雄真がロにした『俺の知り合い』が伊吹のことだと見抜いているわけではないだろうが、 みすももは自ら伊吹に実行した方法、「とっておきの攻略法」とやらを兄に授ける。 7 9 7
奥に向かって優しい感情が、那津音の想いまで流れ込んできた : : : ような気がした雄真であった。 「小雪さん。これは大切にお預かりします。そして、きっと伊吹に : そう決意を口にする雄真は気づいていない。 那津音から託された形見の品を小雪が他人に預けるという行為は、ほとんどその相手に自分の身 を捧げるのと同じくらいの覚が : : : つまり、かなりの好意を抱いているという事実に。 ☆☆☆ そして、事態の変化は小雪が危惧していた方向へと進んでいく。 その日の放課後、それを雄真に報せたのは予想外の相手だった。 最初、校内で雄真が彼女の姿を視界の隅に確認した時、何かの見間違いだと思った。 次にそうではないと分かった時、何かの罠かもしれないという考えが一瞬頭をよぎったが、すぐ にそれを打ち消した雄真は彼女が消えた先、屋上へと急いだ。 ひとけのない屋上とは、一昨日伊吹からの襲撃を受けた場所でもある。それでも構わずそこへ飛 び出した雄真の前に、彼女が今度ははっきりと姿を見せる。 「上条さん : : : 俺に何か用なのかな ? そう、雄真の前に姿を見せた彼女とは、伊吹の腹心の一人、兄の信哉とともにここ数日学園を欠 席し続けていた沙耶であった。 沙耶は雄真と視線を合わせると、背中に担いでいたマジックワンドを手にし、それを静かに構え る : : : のではなく、床に置いた。要するに、恭順というか、自分に戦う意思のないことを雄真に示 7 80
してやるけどな。なんたって、今日からオレの薔薇色の人生が始まるんだから ! 」 ハチの根拠なきその未来の展望は、教室前の廊下にて、クラス分けのメンバーを示す貼り紙を見 ることによって、さらに板一まった。 「うおおっ ! 見ろ、雄真。うちのクラスに、瑞穂坂魔法科一一年の二大美少女がいるぞ。神坂春姫 これぞ愛の奇跡 ! 神様、ありがと—う ! ちゃんに、柊杏璃ちゃんだー 「ハチよ、俺としては、お前と準がまた同じクラスって方に奇跡を感じるぞ」 「やったね。雄真。これで中学からの記録更新 ! 神様、サンキューね」 「だ—から、抱きつくなって、準。神さんよ、俺はちょっとだけ恨むぜ : : : ん ? 神さんならぬ神 坂さんってのは : : : あの神坂さんのことか ? それに、柊杏璃ってのも確か : 魔法科の知り合いが上級生の小雪以外、ほとんどいない雄真としては、見知った相手である貴重 な一一人が同じクラスとなっていた。そのうちの一人、春姫とは、ハチが強引に引っ張っていった教 ね室にて、早速顔を合わせることに。 は「おおつ、神坂さんだ : : : ホントにいるよ。なあ、雄真。姫だよ。オレたちのクラスに姫がいるん だぞ : : : く—つ、生きててよかった」 「そりゃあいるだろ。同じクラスに決まったんだから。っていうか、なんでお前、俺の耳元で小声 なんだ ? 神坂さんにイタズラ電話でもして、声を覚えられてるとか、か ? 」 期 「バカ野郎、違うって。なんか姫相手に直接口を利くのが恐れ多いっていうか : : : 第一、イタズラ 新電話をしようにも、オレ、姫の電話番号知らないし : : : 」
ハレンタインデーに、はひねす ! なく、今はこうして普通に親しくなっている。 とはいえ、先ほどのよ、つにいきなりタマちゃんを撃ち込まれたとあっては、さすがに雄真も何か 一一一一口わずにはいられない。 「あのお、 小雪さん。さっきのはいったい : 「雄真さんって意外と当たり判定が小さいんですのね。ガッカリです」 : ? 当たり判定って、格ゲーのキャラじゃあるまいし : : : それはつまり : : : やつば、俺 にョてるつもりだったとい、つことに : 「まさか。声をおかけしようと思ったのですか、気づいてもらえなかったらどうしようかと : : : そ う、困り果てていたところ、『 ! 』とかけ声を口にしましたら、なぜかタマちゃんが暴走して : 本当に不思議です」 「いや、不思議というよりも至極当然というか : : : で、俺に何か用事ですか ? 」 小雪相手にこれ以上真相を究明しても無駄と、あっさり話題を変えた雄真の顔を、小雪がじ—っ と見つめる。 「そんな風に言葉にしなくても : : : 小雪さん、俺の顔に何か ? 」 「まい。 相変わらずご不幸そうな相が : : : 素晴らしいです。それだけの厄災の相を持った人がこう して五体満足でいられるなんて ! 」 : それは逆にラッキーってことなのかな」 つつ 2
「やめてくれ、準。お前がそういうこと言うと本当にシャレにならない」 雄真が準相手に道端でそんな会話をしていた時だ。不意に近くの公園から聞こえてきた声に、雄 真の足は止まった。それが既視感の始まりだった。 「・ : ・ : ぐすつ。返してよお : 「やだね。誰にやるのか言ったら返してやるよー ほ—ら、ケンジ、パスだ—っ ! 」 「オーライ ! よっ、と。これ、開けちゃおうぜ。手紙とか入ってつかもしんねーぞ」 「おつ、それ、ナイスアイデア」 「えっ : : : だめつ、やめてえっ ! 」 三人の小学生くらいの男の子が、おそらくクラスメートなのだろう、一人の女の子の持っていた ハレンタインデー用のチョコを奪い取って、からかっていたのだ。 「あ—あ、異性への興味の裏返しとして苛めちゃう年頃なんだろうけど : : : 雄真、ちょっとあれ酷 くない ? 」 「 : : : 止めに行ってくる」 「えっ ? 雄真、その表情、子供のイジメを止めるにしては深刻すぎるような : : : 」 準の指摘は正しい。だが、雄真にとっては仕方のないことだった。 複数の男の子が一人の女の子を苛めている現場、それは雄真のトラウマとなった十年前の事件の きっかけと同じだったのだから。 ところが、今回は雄真よりも先に飛び出した者がいた