高峰 - みる会図書館


検索対象: はぴねす!
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1. はぴねす!

瑞穂坂学園の魔法科校舎の前で、同じ黒の色に身を包んだ二人の魔法使いの女の子が対峙して ひるがえ 魔法服の一部である漆黒のマントを翻した一方は : : : なんと、小雪である。 魔法科校舎を背にして、その小雪が行く手を遮っている相手は : : : 魔力を帯びる銀色の髪をした、 黒装束の小柄な少女だ。 そして、両者の間にピリピリとした緊張感が行き交う中、先に口を開いたのはその少女の方だ った。 「ふん : : : 校舎の結界が未だ完全に復旧できておらぬぶん、そなたがこうして控えているというこ とか。高峰小雪 : : : さすがは予知の力を備えし、高峰の血を引く者よな」 「いえ : : : 予知ですべての未来を見通すことはできません。現に、一一月のあの事件 : : : 校舎倒壊は みの 見通せても、その結果までは : : : まさか、校舎倒壊を隠れ蓑に学園の資料を改ざんし、あなた : しえ、あなたたちがこの学園に生徒として潜り込もうとは : : : 」 「校舎倒壊、か。あれは私が望むところではなかったのだがな。まあ、挨拶にしては派手すぎたが、 こちらの覚悟のほどを示す意味ではよかったのかもしれぬ。一応言っておくが、高峰の娘、そなた に示したのではないぞ」 みなぎ 「御薙様、にですね。では、こちらも言っておきますが、あの方と私は関係ありません」 「ほ、つ : : : とい、つことは、高峰家とも関係ないとい、つことになるな。ふつ、面白い。たかが魔法科 の生徒風情が一人で私に盾突こうとは」

2. はぴねす!

「今から十年ほど前 : : : 俺のもとからあの人が離れていった時のことさ : : : 」 雄真がそうポツリと洩らしたのと同時に、鈴莉の「 : : ラ・レフィス ! 」とい、つ亠尸とともにゲー トが開き、雄真たちは満ち溢れた光に包まれていった : そして、一人祠に残った鈴莉のもとに、少しして小雪が姿を見せる。 「 : : : 高峰さん、意外と早かったわね。待ってたのよ」 「御薙先生、よろしかったのですか ? 雄真さんは先生に対して、何か迷いを抱いているようでし たけど」 ・つて、なるほど、そ、ついうわけなのね。こ 「あら、さっきのを見てたの ? だったら、すぐに : 、高峰さんは私たちのことをずつ の前、私に対する雄真くんの呼び方に疑問を投げかけた件といし と気にかけてくれていた : : : そ、ついうことね」 小雪の気遣いが分かれば、鈴莉も彼女に対して真摯にならねばならず、スッと遠くを見るような 目をして語り出す。 「 : : : あの子は『御薙雄真』でいるよりも、今はまだ『小日向雄真』でいた方がいいと思うの。これ でも私って魔法界ではそれなりに有名人でしょ ? そんな私のそばにいたりすれば、きっとあの子 の力を悪用しようなんていう輩があとを絶たないだろうし」 「雄真さんのカ、ですか : : : では、御薙先生が『今はまだ : : : 』と口にしたことや、最近になって 母親の名乗りを上げたことには、何かお考えがあるのでは ? 」 「鋭いわね、高峰さんは。ほら、あの子もそろそろ自らの進む道を選んでもいい頃でしょ ? 魔法 やから 224

3. はぴねす!

を選ぶか、それともまた捨てるか : : どちらにしても、十年ぶりに母親らしいことをしてあげない といけないかなって思って : : : まあ、そんなところかしら」 チラリとだけ本音を覗かせた鈴莉は、すぐにまたいつものポーカーフェイスに戻る。 「そうそう。そんなことよりも、高峰さん、あなたのせいであの子にさっき不信感を持たれちゃっ たようなものよ。『秘宝』がまた暴走した場合、那津音さんの龍笛が必須だわ。だから、それを持っ あなたを待っために、こうして残ったっていうのに」 「龍笛ですか。それは : : : その : : : 今は雄真さんのもとに : 「えつ、そうなの ? それは好都合だけど : : : あの笛をあなたが他人に託すなんてねえ。あっ、も しかして、高峰さん、あの子のことを : : : だったりして」 鈴莉の指摘をさらりとかわすように 、小雪は自分が雄真に龍笛を託した理由を明かす。 「私は、伊吹さんと同じで、那津音様に : : : 姉様に近すぎたのでしよう。私も一つ間違えば今の伊 吹さんのように : : : ですから、雄真さんの未知の可能性に賭けてみました」 ね 「あの子の可能性 : : : 確かにそれは響眼ね、高峰さん」 そう意味深な発言をした鈴莉は、小雪が「お話はこの辺にして、私たちも急ぎましよう」と急か しても、あまり動じない。 円 「式守さんが『秘宝』を暴走させる前に : と言いたいのでしようけど、私はこれを彼女の試練と 大考えているの。式守家の次期当主としての、ね。私が考えている、『秘宝』の永久封印に納得するも よし。暴走させて自らのカの足りなさを自覚するもよし」 225

4. はぴねす!

どうやら小雪と少女は初対面ではなく、バレンタインデーに起きた魔法科校舎倒壊事件も、この 一一人の力が衝突した結果のようである。 だからといって、両者の魔法の実力が同等かどうかは分からない。 小雪と対峙する謎の少女の方が実力は上なのか、終始彼女は不敵な笑みを見せている。 が、小雪の次の一言で、少女の表情は一瞬にして強張った。 なつね 「式守那津音様 : : : 私は彼女の遺志によって、こうしてこの場にいるのです」 「なっ : き、貴様・ : しばし、息をするのも憚られるような緊迫感と、時を刻むのが遅くなったかのような静寂が二 人の間に流れ : : : 痺れを切らした少女の、小さな歯軋りが聞こえた。 「 : : : 何が言いたい、高峰小雪よ ! 」 「那津音様 : : : その名を覚えておられるのなら、思いとどまることです。あなたがなそうとしてい ねることは、あの方の望むことではありません」 「もうよい、一一一一〕うな ! そなたなぞに、何が分かるというのだ ! 」 一瞬沸騰するように激昂した少女は、すぐに冷静さを取り戻す。 「ふん、興が削がれたわ。今宵は退こう。だが、次にまみえる時はそのような御託し ( こよ耳を貸さぬ。 その時に問うのはロにあらず : : : 」 期 そう言いながら、少女はそっと自らのマジックワンドを指で撫でた。 新 : これに問うてほしいものだな、高峰小雪」 はばか はぎし

5. はぴねす!

「 : : : 高峰先輩から、話は一通り聞きました。いくらすももちゃんのことが心配で心配で仕方ない : 高峰先輩が一一一一口うところのシスコンだとしても、盗み聞きは盗み聞きです」 もとはといえば小雪さんが : : : 」 : またしてもシスコン呼ばわりか。たしたし 「小日向くん、言い訳なんて男らしくないです」 「ご、ごめん : : : なんと言われようと、全面的に俺が悪かったです」 ひたすら平謝りする雄真を前にしても、春姫にはまだ気になることがあった。 小日向くんはどこまで話を聞いていたんです ? 「それで : ・ 「ええと、確か、神坂さんの初恋がどうとかって : : : もしかして、あの続き、聞かせてもらえるの かな ? 小日向くんってば ! そんなこと一言うところを見ると、盗み聞きの件、ぜんぜん反省し 「も—う ていませんね ! 」 ばんそうこう 怒りに任せて、春姫はバシッと雄真の腕の傷に叩きつけるように、絆創膏を貼りつけた。思わず す ひ「いてえっ ! 」と雄真が悲鳴を上げるほどの勢いで。 小日向くんが悪いんですからね、やつばり」 「あっ、ごめんなさい。でも : で 自らの初恋話を盗み聞きされそうになったこともあって、常には見せない春姫の剣幕である。だ 委 が、雄真はそれに恐れ入るよりも、つい笑みをこばしてしまう。 「、ハッ : : : すももから聞いた昔の神坂さんの勇ましかったっていうイメージ、それってあんまり 想像できなかったんだけど、今なら少しは分かるかな」 8

6. はぴねす!

「モグモグ : : : それはそうと、雄真さん、私が預けたあれはちゃんと持っていますか ? 」 小雪の一一一口う『あれ』とは、例の龍笛のことであり、雄真は「はい、持ってますけど」と気軽に答え た。そのやり取りが騒動のきっかけになるとも知らずに。 「なら、 いいです。あれは私だと思って、肌身離さずでお願いしますね」 おそらくワザとであろう、意味深な小雪のその発言が物議を醸し出す。 「ちょ、ちょっと、雄真くんー いったい、高峰先輩から何を : : : 以」 「肌身離さず、って : : : 兄さん、浮気者です。いろんな意味で」 「いやいや、すももちゃん。問題はその前の『私だと思って : : : 』の部分よ。さあ、雄真。洗いざ らい白状しなさいって ! 」 「いや、杏璃、白状って別に俺は ・・・・・・、つつ ! 春姫にすもも、そんなジト目で俺を : ・・ : これはそう いうんじゃないんだって ! 」 物議を釀した張本人の小雪が澄ました顔ですももコロッケをたいらげる横で、雄真は春姫たちか らいわれなき糾弾を受けていた。 まあ、傍から見れば、男一人に女四人というこのお食事会の図式は一種のハーレムといってもい いだろう。ハチが見たら、血涙を流して羨むことは間違いない。 そして、いつもはこのお食事会に顔を出さない鈴莉が珍しく現れ、その事実を指摘した。 「あら、随分と賑やかだと思ったら、高峰さんまで : : : それに、雄真くんが実はモテモテだったと は知らなかったわ うらや 7 96

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にダメージを負、つ。 「きゃあっー こんな数の魔法弾を操れるなんて : : : 手強い」 「春姫っ ! くそっ、信哉、そこをどけえっ ! 」 「 : : : と言って、どくわけないわよね、信哉が。それは上条さんも同じなんでしょ ? 雄真は信哉に、杏璃は沙耶にと、それぞれ阻まれて、春姫の援護に向かえない。 尤も、戦力ゼロの雄真の方は、信哉が危険にさらさないよう気遣って、安全地帯に避難させて いるようなものだが。 「さて : : : 余興にもならなかったが、御薙の娘相手にいっさい手は抜かぬ。ア・ディバ・ダ・ギ ム・バイド : 伊吹のその呪文により、魔力が急速に魔法陣へと集中していく。それは、魔法素人の雄真にさえ 危険な予感が膨らむほどの迫力を有していた。 ね「ううつ : ・・ : あれをまともに受けるわけには : ・・ : ディ : : 一フティル : : : アムレ : : : 」 「遅いわっ、神坂春姫いっリ」 今度こそ、伊吹の放っ光の矢に春姫が全身を貫かれる : : : と誰もが思った瞬間、呪文を唱える静 キ一かな声がこの場に響き渡 0 た。 : エスティオラ・エイム・エルスタス」 それによって発動した魔法が、伊吹の魔力の渦を一気に拡散させる。 フ 「なっ : ••2: この術式は : : : やはり、高峰の娘かー 727

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= = 。音羽もすももも小雪が少し変わっているのを承知していたので雄真の話 なんとも失礼な舌だが、 に納得してくれる。 「あらあら、雄真くんったら、相も変わらず高峰さんに振り回されてるってわけね」 「占いかあ : : : ちょっと興味あるかも。今度機会があったらその占い研究会の見学、お願いします ね、兄さん。あっ、そうだ。伊吹ちゃんも占いとか興味あるかなあ 「伊吹か。あの子のキャラからすると、それはどうかなあ。けど、見学ならいつでもだぞ、す 、も、も。 正直、雄真は心苦しい。音羽にすもも、血の繋がりはなくとも家族には変わりのない彼女たちに 嘘をつきたくないのが本音だったのだから。 ( けど、今回は場合が場合だ。魔法使い同士のドンパチなんかに、とてもかーさんやすももを巻き : って、春姫も俺のことをそう考えてるんだろうな。でも、俺は : : : ) 込めない : 、チにまで「五月病にはまだ早い ね 悩み尽きない雄真は、登校の最中にもそれが顔に出てしまい、ノ はぞ、雄真」と言われる屈辱的な目に遭った。 そして、やはりというか、信哉と沙耶の二人は学園を欠席していた。 つ、二人揃って休みとは ! 信哉はどうでもいいが、沙耶ちゃんのご尊顔を拝せないの : ハッ、もしかして二人は昼間つから禁断の行為にふけってたりして : : : おいつ、雄真。信哉 と同じシスコン仲間のお前なら何か知ってるんじゃないのかー フ 「誰がシスコン仲間だっ ! 」 703

9. はぴねす!

雄真に対して軽い調子で話しかけてきた、なぜか言葉を喋る謎の球体は、魔法使いが所有する マジックワンドの一部であった。なんでも『スフィアタム』という名前らしいが、舌を噛みそうな それは短く略されて普通は 「やつば、『タマちゃん』だったか。ということは、やつばり : 雄真が予想した通り、超低空飛行でフワフワと飛ぶタマちゃんの本体であるマジックワンドにち よこんと腰を下ろした、一人の黒髪の女生徒が姿を見せた。 「おはよう ) 」ざいます、雄真さん」 あいさっ たかみねこゆき 丁寧にそう挨拶しペコリと頭を下げたのは、『高峰小雪』という魔法科の一一年生だ。 たたず 凉しげな佇まいと時折見せる柔らかな笑顔が魅力的な美人 : : : というだけにとどまらないのが、 小雪だった。たった今、タマちゃんをいきなり飛ばしてきたように、 たまに突拍子もないことをし でかすお茶目な性格の持ち主なのである。 本来、普通科の雄真が魔法科でしかも学年の違う小雪と知り合う機会はない。きっかけは、なぜ か入学したばかりの雄真に小雪の方から声をかけてきたことだった。 というと、逆ナンのようにも思われるが、そうとも言い切れない。何しろ、その第一声とは : 「あなた、とても不幸な相をお持ちですね」だったのだ。 その後に、小雪の占い、魔法使いとしての能力のそれが、限りなく的中率百パーセントに近いと、 雄真は知った。普通なら先の第一声も併せて、恐れおののいても不思議ではない。 しかし、魔法に関して複雑な感情を抱いているせいもあってか、雄真は特に小雪を避けることも 2

10. はぴねす!

といっても、根が暗いとか社交的でないというわけではない。ある段階までは他人と親しく接し ても、それ以上は相手から踏み込んでこない限り、単なる知り合い止まりに終わってしまうだけ である。 雄真の本質、それはあのバレンタインデー前日、公園で苛められていた女の子をすぐに助けよう としていたのを見ても分かるように、他人を放っておけない性格なのだが。 だから、変化というよりも本来の自分を取り戻しつつあるといったほうが正しいわけで、雄真は クラス委員就任を皮切りに本人自覚なしでいろいろと動き出した。 まず、小雪が部長を務める占い研究会に彼女以外部員がいないと知って、新入部員獲得に奔走し : これはあまり上手くいかなかった。 たのだが : ・ 魔法科の生徒は、高峰家という魔法界では名門の家柄と、小雪自身の飛び抜けた魔法の実力に恐 れをなしている傾向があったため、雄真は普通科の生徒に狙いをつけた。 だか、いざ占い好きの女生徒たちを雄真が部室に連れていったところ、そこのホラーすぎる雰囲 び気がまずかった。加えて、小雪から「これで本物の幽霊部員の方たちも喜んでくれるはす : : : あっ、 今、照れていらっしゃいます」などの発一言も飛び出す事態に、新入部員候補たちは全員逃げ帰って しまったのだ。 委 「う—ん : : : あとは何も知らない新入生を騙して : : : いやいや、一年生で興味のありそうな子を見 つけるしかないかな」 「まあ、気長に待ちましよう、雄真さん。きっとそのうち : : : そう、来年度くらいに ( 誰か興味を だま ほんそう